Post date: Jun 20, 2010 5:6:37 PM
≪とある家族の、とある土日≫
ジイジの家に来て一カ月。寝ている間にママが出産入院した。
その朝、人生で初めての『ママの居ない朝』の理由を、誰にも聞かず理解していた。
意気揚々と、自慢気にバアバに教えてあげた。
夕方、ようやく現れたパパにも『ママの居場所』を得意気に教えてあげた。
“弟”はスグに生まれて、午前中にはバアバとジイジと一緒に見に行ったし。
そして、夕方からはパパと沢山遊んだ。
夜、パパと布団に入って伏し目がちに言った。「ナナちゃんなぁ。ママに会いたいねん」。
口を真一文字に力いっぱい閉じて、下唇を突き出して、必死に涙をこらえていた。
少し間をおいて、今度はパパの目を見て大きな声で言った。「ママに、会いたいねん」。
一気に我慢できなくなった。
どうしようもなく我慢できなくなった。
号泣しながら、パパに何度も何度も「マァマァにぃ、会いたいぃ!!!」と嘆願した。
泣くだけ泣いて、泣き疲れて落ち着いた。
「ナナちゃんな・・・、ママに・・・、会いたかったねん・・・」。最後にそう言って、ようやく寝入った。
次の日の朝も、気丈に振る舞った。
ママの居る病院にも、一時間だけ連れて行ってもらった。
「ウエンウェン、泣いてん」。ママに報告した。
その後は、パパとカイモン。
食パンマンの形の楽器(マラカス)を買ってもらった。
メロンパンナちゃんのカードも買ってもらった。
コインゲームコーナーでも、たくさんコインを買ってもらった。
ソフトクリームも買ってもらった。「パパこと(のこと)、スキねん(好きやねん)」。
でも、何だか、アンマリ楽しくなかった。
ジイジの家に戻った。
ママの部屋に、ママの服が干してあるのを見て、パパに教えてあげた。
でも次の瞬間、また急に悲しくなった。
口を真一文字に、下唇を突き出して、必死に我慢した。
そのままパパに抱きついて、その顔を隠した。
晩御飯の後、パパを“ダッコ散歩”に誘った。
玄関でパパにアメちゃんを半分にしてもらった。
玄関を出るとスズメが飛んでいた。「うゎーぁ、トリやぁ、アッチぃー(行こう)」
でも、今日は一度も昼寝をしなかったから、スグに睡魔が襲ってきた。
その小さなアメちゃんを舐め終わる前に、あっけなく試練二日目が終わった。
(さて・・・、“試練三日目の朝”は、パパも居ない・・・)